リゾホスファチジン酸(Lysophosphatidic acid;LPA)は、細胞膜の脂質二重層を構成するリン脂質に由来する生理活性物質です。

LPA受容体は、7回膜貫通構造を有するGタンパク質共役型受容体で、これまでに6種類(LPA1-6)同定されています。

私たちは、世界に先駆けて、骨髄間葉系幹細胞(Bone Marrow Mesenchymal Stem Cells;BMMSCs)において、LPA1のシグナルを阻害することで、細胞老化が抑制されることを報告してきました(Kanehira et al., PLoS One 2014)。

さらに、BMMSCsの細胞老化はLPA1とLPA3のシグナルのバランスで制御されていること、そして、そのBMMSCsの細胞老化が多発性骨髄腫の症状の軽重を左右することを報告してきました(Kanehira et al., Stem Cells 2017)

この報告は、これまで不明であった「多発性骨髄腫の発症率は加齢とともに増加する」という現象を解明したもので、現在、多数の論文に引用されています。

現在、LPA3ノックアウトマウスを用いて、細胞老化と個体老化の関係について実験を行っています。

LPA3以外にも、他のLPA受容体ノックアウトマウスを順次作成し、解析する予定です。

「じっくり腰を据えて」取り組む価値のあるテーマだと(個人的に)思っています。